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【引当金】


かつては、会計上の主な引当金は税法上も認められていましたが、「貸倒引当金」と「返品調整引当金」だけが税法上も認められています。

ここでは、適用例の多い「貸倒引当金」について説明します。

〔1〕貸倒引当金

法人が繰入れた貸倒引当金のうち、税法上の貸倒引当金繰入限度額を超える額は損金不算入となります。税法上の繰入限度額は次により算定します。

個別評価する金銭債権 × 繰入率 ( 別表11(1) )

一括評価する金銭債権 × 繰入率 ( 別表11(1の2) )

「個別評価する金銭債権」に対する貸倒引当金は、税法上の貸倒基準を満たさないまでも、それに近い状態(会社更生法による更正計画の認可等)の場合に認められる引当金です。「一括評価する金銭債権」に対する貸倒引当金は、売掛債権等に一定率を掛けて限度額を計算します。

一括評価分の繰入限度額

次の方法により算定します。

  期末売掛債権等の帳簿価額

+ 売掛債権とみなされる額及び貸倒否認額

- 税務上の貸倒認容額、売掛債権に該当しない額(商品代の前払金、仮払の費用等)

個別評価の対象となった売掛債権 

① 期末一括評価金銭債権の額 × 繰入率(実績率) ⇒ 原則

実質的に債権とみなされない額  (同一の取引先に買掛債務等がある場合)

② 差引期末一括評価金銭債権の額 × 繰入率(法定繰入率)

資本金が1億円を超える大法人(繰入が認められている業種に限る)は原則的方法で計算しますが、中小法人は原則的方法と法定繰入率の選択適用ができます。原則的方法で計算する場合の繰入限度額計算の対象額は「①期末一括評価金銭債権の額」ですが、法定繰入率で計算する場合は「②差引期末一括評価金銭債権の額」になります。

中小法人の法定繰入率 / 計算方法

事業区分

繰入率

 中小法人は以下の計算方法を選択できます

卸・小売業

  10/1000 

①「期末一括評価金銭債権の額」×「実績発生割合」

②「差引期末一括評価金銭債権の額」×「法定繰入率」

製 造 業

 8/1000 

金融・保険業

3/1000 

割賦小売業

 13/1000 

その他の事業

6/1000 

〔事例〕

社(中小法人)が当期に繰入れた貸倒引当金は 800,000円です。また、個別評価によって繰入れた金額はありません。

期末の売掛債権等は次の通りです。

勘定科目

金  額

 備 考

売掛金

38,615,957

 

受取手形

8,450,000

 

貸付金

5,650,000

うち取引先のC社分が 2,500,000円。C社には 4,560,000円の買掛金あり。

割引手形

12.659.560

 

●別表11(1の2)

 当    期    繰    入    額

   800,000

 

 

期末一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額

 

貸    倒    実   績   率

 

実質的に債権とみられないものの額を控除した期末一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額

62,875,517

法     定     の     繰     入     率

10/1,000

繰        入        限        度        額

628,755

公益法人等の当期繰入限度額 

   ( 102%又は104% … 事業年度により異なります ) 

 

  繰      入      限      度      超      額

171,245

一 括 評 価 金 銭 債 権 の 明 細

勘定科目

期末残高

売掛債権等とみなされる額及び貸 倒 否 認 額

税務上の貸倒れ額及び売掛債権等の非該当額

個別評価の対象となった売掛債権額

リース会社の本業以外の金銭債権

連結法人に対する売掛債権の額

期末一括評価金銭債権の額

実質的に債権とみられないものの額

差引期末一括評価金銭債権の額

売掛金

38,615,957

 

 

 

 

 

38,615,957

 

 

受取手形

8,450,000

 

 

 

 

 

8,450,000

 

 

貸付金

5,650,000

 

 

 

 

 

5,650,000

2,500,000

 

割引手形

12,659,560

 

 

 

 

 

12,659,560

 

 

        :

 

 

 

 

 

 

 

 

 

65,375,517

 

 

 

 

 

65,375,517

2,500,000

62,875,517

基準年度の実績により実質的に債権とみられないものの額を計算する場合の計算(略)

〔3〕申告調整

各引当金の繰入限度超過額を別表4・別表5(1)に転記します。社では、貸倒引当金の繰入超過額を処理します。

〔 別表4 〕

区         分

総    額

留    保

社 外 流 出

当期利益又は当期欠損の額

  

              

               

配 当

1

その他

1

加算

 

貸倒引当金

 

171,245

 

171,245

1

 

減算

 

          

 

 

1

      仮           計

1

1

 

1

    1

1

1

 

1

   所得金額又は欠損金額

1

1

        1

1

〔 別表5(1) 〕

区               分

期 首 現 在

利益積立金額

当 期  の 増 減

翌期首現在

利益積立金額

利益準備金

      :

貸倒引当金

 

 

 

 

171,245

 

納税充当金

 

          

 

 

 


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