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固定資産の取得価額

個人事業では、文中 「法人、会社」 等としている箇所を適宜読み替えてください。

■ 購入資産の付随費用

購入した資産の取得価額は、次の金額の合計額です(法人税法施行令54条@)。

購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、その費用を加算した額)

当該資産を事業の用に供するため直接に要した費用の額

算入すべきか、算入しなくてもよいか? 判断に迷いそうなものを幾つか挙げておきます。

借入金の利子

資産購入のために借入をした場合の利子は … 算入しなくてもよい。

租税公課

不動産取得税・自動車税、登録免許税その他登記・登録に要する費用は … 算入しなくてもよい。

建物等の立退料

建物等の取得に際して使用者に支払った立退料は … 算入します。

事後的に支出する費用 建物等の建設に伴って支出する住民対策費・公害補償費等、当初からその支出が予定されているのもは … 算入します。建物の落成式典の費用等は … 算入しなくてもよい。

ソフトウエアーの導入費

導入にあたって必要な設定作業や、仕様の修正作業等の付随費用は … 算入します。

寄附金・負担金

市町村等の工場誘致等により土地等を取得した場合で、その取得に関連して市町村等に寄附金・負担金を支出している場合

●公道との取付道路等、実質的に土地等の代価の一部と認められる場合は … 算入します。

●上下水道等の負担金で、自社も便益を受けるもの … 通常は無形固定資産(水道利用権)になります。

●公園、緑地、消防施設等の公共施設で主として周辺住民の便益になるもの … 繰延資産になります。

〔補足:土地の登記・登録費用〕

土地の取得にあたっては、登録免許税その他登記・登録に要する費用は、取得価額に算入しなくても構いません。土地=非償却資産にそれらの付随費用を算入すると、土地を処分するまで費用にすること(売却益が減少、或いは売却損が増加すること)はできませんが、貸借対照表の資産額は付随費用の分だけ多くなります。

取得年度の費用として処理するか、資産額を少しでも多くするか … いずれかで判断してください。

■ 少額(10万円未満)の減価償却資産

ご存知の通り、使用期間が1年未満或いは取得価額が10万円未満のものは、取得した年度でその全額を費用にすることができます。取得価額が幾らかは、通常の取引単位(1台、1基、1個、1組等)で判定します。幾つか事例を挙げておきます。

応接セット

ソファーとテーブルで1セットのため、1セットで判定します。

パソコン

新規購入時には本体・ディスプレイ・プリンター等で1セットになります。本体だけ買い換えた場合は、本体の価額で判定します。

百科辞典

全巻で1揃いですから、全巻の価額で判定します。

照明器具

新築時には建物附属設備に含まれますが、蛍光灯等の取替時には修繕費になります。

間仕切・カーテン

1個ずつで機能しますから、1個単位で判定します。

なお、金額の10万円ですが、税込経理の場合は税込額で、税抜経理の場合は税抜額で判定します。

■ 土地と建物の一括購入

土地と建物を一括で購入した場合で、土地・建物価額が区分されていない場合は、土地・建物のいずれかを時価評価して、残額を他方の取得価額とします。不動産鑑定士の評価など何らかの合理的な評価が必要です。なお、消費税については土地譲渡は非課税取引、建物は課税取引です

一括購入後、概ね1年以内に建物を取り壊した場合

●当初から取り壊しを予定していた場合 … 建物の帳簿価額と取り壊し費用を、土地の取得価額に算入します。

●建物の不具合等で取り壊した場合 …土地の取得価額には算入しません(税務上の疑義を避けるため、取り壊しの経緯を整備しておきましょう)。

■ 高価買入資産、低価買入資産 … いずれも、適正価額(時価)が取得価額とされます。

◆高価買入資産

役員から高額で買い入れた場合

 

適正価額(時価)との差額は役員給与と判定されますが、差額分は損金不算入です。

関連会社から高額で買い入れた場合

 

適正価額(時価)との差額は寄附金と判定されます。

譲渡した側は

◆帳簿価額との差額が譲渡益になります。

◆譲渡した資産が償却資産の場合は、資産の譲渡損益(課税取引)と寄附金の受贈益(不課税取引)を区分しておかないと、受贈益部分も課税取引に認定されるかもしれません。

 子会社の資産 簿価 1500万円 (時価評価額は1750万円) を親会社が 2000万円 で買い取った場合

親会社

資産

1750  

現金・預金

2000

寄附金

250  

子会社

現金・預金

2000  

資産

1500

譲渡益

250

一括で益金500にしておくと、500が譲渡益に判定される恐れあり

受贈益

250

◆低価買入資産

役員から低額で買い入れた場合

 

適正価額(時価)との差額は受贈益と判定されます。

資産を譲渡した役員については

◆譲渡価額が時価の1/2未満の場合

「譲渡価額が時価の1/2未満のときは、時価により譲渡したものとみなす(所得税法59条@)」の規定により、譲渡所得の収入金額=時価として所得計算されます。

◆譲渡価額が時価の1/2以上の場合

上の規定は直接的には適用されませんが、同族会社の場合は「同族会社の行為又は計算の否認」規定が適用され、結果としては譲渡所得の収入金額=時価として所得計算すべきとなります。

 

関連会社から低額(又は無償)で譲受けた場合

 

適正価額(時価)との差額は受贈益と判定されます。

資産を譲渡した側については

◆譲渡資産の時価と帳簿価額との差額

譲渡益

◆譲渡資産の時価と譲渡価額との差額

寄附金

になります。

 親会社の資産 簿価 1000万円 (時価評価額は1800万円) を子会社に 1200万円 で譲渡した場合

親会社

現金・預金

1200  

資産

1000

寄附金

600  

譲渡益

800

子会社

資産

1800  

現金・預金

1200

受贈益

600

 

■ 自社製作、自社育成した固定資産

●自社で建設・製造した場合

その資産の建設・製造のために要した原価 ( 原材料費+労務費+経費 )+ 事業の用に供するため直接要した費用の額

◆原価は、適正な原価計算によって算定された金額

◆通常発生する仕損じは原価に算入しますが、異常な仕損じは算入しません

●自社で育成した場合(家畜、果樹など)

 

 

次の額の合計額

◆購入代価又は種付費・出産費用(種苗費)

◆育成のために要した飼育費(肥料費)・労務費、経費

◆事業の用に供するため直接要した費用の額

取得価額に算入された交際費がある場合(法人のみ)

工場などの建設に際し地域住民に対して金品を支出した場合は「事業の用に供するため直接要した費用の額 」 に該当するため、その支出額は取得価額に含まれます。法人税では、この支出は交際費に該当し「交際費の損金不算入 」 の規定が適用されますので、損金不算入となる金額を限度として取得価額を減額することができます。

●減額できる金額

 

大法人 ⇒ 取得価額に算入した金額

中小法人 ⇒ 取得価額に算入した金額×交際費の損金不算入割合

 ・交際費等で経理した金額

800万円

 ・取得価額に算入した交際費該当額

250万円

 ・交際費の損金算入限度

540万円 ( 600万円 × 0.9 )

◆損金不算入額

800+250−540=510万円

◆減額される額

250×510÷1050≒121.4万円

●調整方法

取得価額の減額は、決算又は申告調整で行います。申告調整で減額する場合は

    ・別表4     減算・留保 「○○認定損」

   ・別表5−1  当期増減の増 「△○○」

  翌期には、次の決算調整と申告調整が必要です(通達)。

   交際費(前期損益修正損)  *****    建物   *****

    ・別表4     加算・留保 「○○認定損戻入」

    ・別表5−1  当期増減の減 「△○○」

 この翌期の決算調整処理については、取得原価主義に反しており不適切との指摘もあります。この指摘に従えば、各事業年度の減価償却相当額だけ、順次加算調整することになります。

 

 

製作・著作 (有)協進会  2009/12 


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